2016年 08月 05日 ( 1 )

展示室に入り、入り口近くの初期の三作品を見て、
『残照』を目にした瞬間、あぁ!と思った。

『残照』は高い山に登って、遠くの山々を眺めている時のような静かな山の絵だ。
一つ前に飾ってあった絵は、田んぼのあぜの形の面白さに惹かれて
その形を描きたくて描いたのだということが分かるような絵だった。

けれど『残照』には前の絵のように「魁夷が何に惹かれたか」が分かりづらくて、
自分の主張を消して、あるがままの風景を描いている気がした。
「あぁ!ここでこの人は何かに気がついたんだ」と思った。


旅先の北欧で湖にくっきりと映る森林を見て、
普通の絵ならぼやかして描くだろう水に映る木をくっきりと描いたものがあった。

形の面白さを表現するのが好きな人のように思う。

初期の田んぼの絵。冬の京都の屋根が並ぶ絵のリズム感。
雪山の白さと冬の森の針葉樹の暗さ。
水平さを強調した森と湖の風景。


白い馬が出てくる絵ばかりかと思ったら、色んな作品を描いている。
静かそうな絵ばっかりで面白くなさそうだなんて思っていたから驚いた。


旅をして絵を描いて、新しさを取り入れてずっと進化をしていく魁夷の一生を
絵で見ていると涙が出た。

人物の絵ではなくて風景なところも
画家の想いや人となりを勝手に想像しやすいのだと思う。

唐招提寺の襖絵は日本に来る時に目の見えなくなった
鑑真に故郷の風景を見せてやりたいという気持ちから故郷の桂林の山と柳が描かれている。
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鑑真が渡ってきたであろう日本の海のふすま絵も
まるでお堂をそのまま持ってきたように展示されていて、
お寺を拝観しているような気持ちになった。
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山から湧き出る雲の風景を描いた障壁画は大きさもあいまって
その場に居るような臨場感のある絵だった。
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「東山魁夷って、白い馬の絵の人でしょ?」
「道の絵の人でしょ?」と思って食わず嫌いしている人にこそ行って見てほしい展覧会でした。


九州国立博物館
特別展『東山魁夷 自然と人、そして町』

平成28年7月16日(土)〜8月28日(日)
休館日:毎週月曜日 *ただし、8月15日(月)は開館



九州国立博物館のぶろぐるぽに参加しています。
写真は九博からお借りしています。
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