「拝啓 髙島野十郎 様」

野十郎様、初めまして。

今日はバーゲンのついでに福岡県立美術館に来てみました。
あ、ついで、って言ってすみません。
あと、ありがとうございますを先に言っておきます。


野十郎様のおかげで、わたしは初めて県美の4階に行くことができました。
(図書室があるのも初めて知りました)。


いつもは美術館に行っても特別展だけ見てお腹いっぱいになってしまうので、
上の階に行ったことがなかったのです。



私が気になった絵は「月」「すいれん」「けし」「池のある風景」「静物」です。


「月」の絵は満月ですよね?満月の夜は、いつもより月が明るくて、

月の周りがあんな風に明るいですもんね。


「すいれん」の絵は、何かの本の表紙みたいですね。
黒い背景に睡蓮がぽつぽつと浮かんで。詩集かなぁ。


「けし」の絵にはちょっとびっくりしてしまいました。

柔らかそうなピンクの花びらに不似合いな、って言ったら言い過ぎでしょうか?
花に不似合いなくらい力強さを感じさせる茎がくっついていて。
今度けしを見つけたら、じっくり観察してみます。案外たくましさを感じる花なのかもしれませんもんね。



「池のある風景」は朝でしょうか?夕方でしょうか?

私は朝だったらいいなと思います。
空にも木にも草にもピンクが少しずつ入っていて、
それが朝日に照らされたせいだと考えたら素敵だなと思うのです。
何だか良い一日が始まりそうです。


「静物」はりんご二つと陶器の湯呑のようなものがテーブルに置かれた絵ですが、
私はこれを見てちょっと涙が出てきてしまいました。

テーブルはたぶん木製で、表面につやを出す加工がされていて、
りんごと湯呑が水面に映るかのようにテーブルに逆さまに描かれています。

昔、子供のころ家にあったテーブルに突っ伏して、ぼんやりと周りにある物を眺めていた時、
こんなふうにものが逆さまに見えたなぁと思いだしたら、涙が出てきてしまったのです。


野十郎様が描く絵は、人物以外の絵が多いそうですが、
人の気配を感じさせる、と会場の説明書きにあった気がします。

すばらしい絵を見て感動したり、想像したりすることはよくありますが、
一枚の絵が、思いがけない記憶を「今」に引っ張り出してくるという体験は、なかなかありません。


描かれたものの裏には描いた人がいるわけで、
野十郎様が私のように感じながら物を見たわけではないでしょうが、
「物をそのように見た」という部分は同じだと思えるのです。

本当に勝手だとは思いますが、絵の中に縁を感じたのです。
今日はそれが申し上げたくて筆を執ったしだいです。


久留米の石橋美術館で行なわれている「髙島野十郎・里帰り展」で
また、たくさんの絵に会えることを楽しみにしています。


                                         敬具

平成23年7月11日
                                         ヨシト




「拝啓 髙島野十郎 様」展 福岡県立美術館(H23・8・31(水)まで)





 
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