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君の名は、いぬばこ?

シュールなものが絵の中からじっとこちらを見つめている。

猫か犬のような胴に人の顔が付いている。
人面犬と言うと想像しやすいかもしれない。

頭には赤いリボンを巻いて、ちょっとおしゃれをしている。

表情はあまりない。眉も口もフラットな一直線である。

そんなへんてこな物がいるのに、誰も驚いたり、珍しげに見たりしていないのは、
見えていないのか、興味がないのか、はたまた私だけに見えるのか。

しかもあちらの掛け軸に一つ、こちらの絵巻物に一ついる。作者は別々だ。


入り口近くにあるのは、江戸時代の絵巻物で、タイトルは「きりぎりす絵巻」。
貴族の嫁入り風景を人の代わりに虫が演じている。

嫁入り道具を持つ家来も虫だ。

横に見ていくと、なめくじが牛車の代わりに車を曳いている。


アメ車ならぬナメ車だ。


虫が両端をかつぐ駕籠の中には人形と真正面を向いているそいつがいる。

もう一つの絵は鈴木守一の「桜下花雛図」。
草をお内裏様とお雛様の雛人形に見立てた絵で、その下に横向きのそいつがいる。

家に帰って犬、雛人形で検索してみた所、犬筥というのがどうやらそいつの名前っぽい。
小学館のサイトへ

犬は多産の象徴だそうなので、雛人形や嫁入りに持って行ってもおかしくない。
こいつは犬筥だ!と結論づけてみたものの、正解は学芸員さんに聞いていないので分からない。

素敵だったのは、
酒井抱一の「青面金剛図」。
普通、掛軸の回りはきれいな布で表装されているのだけど、
抱一はその縁取りの布まで絵で描いているのだ。描表装と言うそうだ。
バックはマットな黒で画面が引き締まって格好良い。

鈴木基一の紫陽花と藤の花も色使いが素敵だ。「紫陽花四季草花図」「藤花図」。
紫陽花の額がお菓子みたいで、一粒ずつ口に含んだら美味しそうだ。

喜多川相説「秋草図屏風」宗達の三代目と書いてあったような気がする。
ずっと見ていたくなる萩の点々とした葉っぱのリズムが気持ちいい。

神坂雪佳の犬の絵は来ていなかったが、金魚が見れた。
ポストカードは犬の絵があったので買ってしまった。
最初に新聞の広告で見たとき、犬の体のあまりのまろやかな線に妖怪かと思ったのだった。

肝心の若冲は会場のノートに書いてあるように少なかった。
若冲が高齢になってから墨で描いた鶏は線に勢いがあって生き生きとしている。小さなひよこも可愛い。

「平家納経(模写)」も素敵でした。巻物状になっている時の巻物についている飾りや軸の細工が見事です。
こんな豪華なの初めて見た気がする。

若冲少なくても、損は無いかと思います。

北九州市立美術館『琳派と若冲展』
開催中。2011年2月13日まで。